Writingsコラム

アンラーニングで知識の入れ替えを

疫病、災害、紛争……予想もしなかったことが起こり、従来の常識が覆されています。物事のスピードがますます速くなり、確実性以上に対応力を試されることが多くなりました。そんな現代社会では、不要な知識にこだわることなく、潔く捨て去るアンラーニングという手法が適切なのではないかと言われています。

アンラーニング(unlearning)とは、学習することの逆の意味。日本語では「学習棄却」「学びほぐし」などと言われています。アンラーニングは、持っている技術や知識の中で、時代の変化に合わなくなったものを捨て、代わりに新しい知識や技術を取り込むこと。従来の知識を新しくアップデートするのではなく、使わない知識を頭の隅に押しやり、新しい知識を学んで使うことになります。いわば知識の断捨離。クロゼットの中にある着古した服を捨て、空いたスペースに機能的で時代に合った新しい衣服を手に入れて身につける、というようなイメージです。アップデートは従来の服をリメイクして着続けるようなイメージになるでしょう。

ですが人間の頭の中はクローゼットと違い、得ていた知識を完全に忘れ去ることはできません。経験が豊富である人ほど、従来の知識でうまくいっていた体験があるため、古い知識に固執してしまうこともあるかもしれません。ですが新しい知識や技術は、時代に適応した有効性や便利さがあり、それに適応していくことが現代では求められています。経験豊富な人ほど過去の経験に固執することなく、柔軟な姿勢でアンラーニングすることが求められます。

アンラーニングと似たような言葉にリスキリング(reskilling)というものがあります。従来であれば一つの技術(スキル)を取得していれば定年まで働けていたはずでしたが、現代社会の変化のスピードはそれを許してくれません。時代の変化に沿った新しい技術を何度か取得していかなければ、取り残されてしまいます。アンラーニングで知識を入れ替え、リスキリングで必要な技術を取得していくことが現代社会では求められているのです。

リカレント(recurrent)という言葉も聞いたことがあるかと思います。これは、学校教育を終えた後でも、生涯にわたって学んでいくことを示します。循環する、再発するという訳語の通り、その人なりのタイミングで学習を続けていく「生涯学習」という言葉で知られています。これは得ていた知識に新しい知識を積み重ねていくことなので、ラーニングということになります。

経験が多いほど能力の幅は広がります。ですが、時間の経過とともに知識や技術は変化していきます。常識に凝り固まった頭の凝りをほぐし、思い切って思考を切り替え、新しい手法を取り入れて、前向きに取り組んでいきましょう。

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