Writingsコラム

イースター、日付の謎

毎年、春になると、有名レジャー施設などでイースターイベントが行われるため、馴染みがあるかと思います。でも、イースターの日は毎年違うし、どうやって決められているのか、よくわからないという人も多いかもしれません。その辺り、はっきりさせていきましょう。

イースターは復活祭と訳され、十字架にかけられて亡くなったイエス・キリストが3日後に復活したことを祝う宗教行事です。春分の日の後の、最初の満月の最初の日曜日と決められている移動祭日で、毎年日付が変わり、2024年のイースターは3月31日です。

13日の金曜日はイエス・キリストが亡くなった日であるために不吉だと言われていますが、イースター前の金曜日はグッドフライデーと呼ばれています。なぜグッドなのかといえば、イエス・キリストがすべての人の罪を引き受けてくれたため、神の愛が人々に注ぐようになったとされるからです。が、よく考えると、金曜日に亡くなったのであれば3日後は月曜日で、イースターは16日の月曜日に行われるはずです。しかしイースターの設定日は、暦とキリスト教の歴史に深く関わっているために、2日後の日曜日で正解なのです。

キリスト教は、イエス・キリストが亡くなった紀元30年ごろ、信者たちが教会をつくったことから始まります。ご存知の通り、キリスト教はユダヤ教から分派した宗教です。そうした理由で、復活祭はもともとヘブライ暦を使っていたユダヤ教の過越祭をベースにしていましたが、キリスト教の勢力が拡大したため、ユダヤ教からの差別化を図らなければならないと、325年のニカイア公会議で、ヘブライ暦からの脱却が決定しました。1054年に西方のローマ教会と東方正教会が分裂し、西方がグレゴリオ暦、東方がユリウス暦を採用したため、現在でも両者の復活祭の日付は違います。(2024年の場合、東方正教会は5月5日)

このイースターの日付の決め方ですが、春分の日を基準としているものの、まだ統一見解は定まっていません。毎年変動する移動祝日ではなく、固定化しようと、過去、さまざまな国が試みましたが、調整に失敗し続けています。一応、西方と東方、両教会の日付を統一しようという動きは長年続けられており、2025年のニカイア公会議1700周年に間に合うよう、合意に向けて調整を進めています。

ユダヤ教徒も共通して経典としている旧約聖書には、神が定めた規則「十戒」があり「安息日を守りなさい」と定めています。安息日は、体を休め、神を礼拝する日です。イエス・キリストが亡くなった後、使徒たちが書いた新約聖書には、週の最初の日、つまり日曜日に復活したと書いてあるため、キリスト教は日曜日を安息日としました。そうした理由から、復活祭は月曜日ではなく日曜日なのです。ちなみにユダヤ教の安息日は土曜日で、やってはいけない規則がたくさんあります。

イースターといえばウサギと卵がシンボルですが、これは多産や生命の始まりを意味しています。そうしたことから、イースターの料理には卵が使われることも多いものです。が、キリスト教徒にとって、クリスマス以上と言われるイースターですので、各国それぞれのとっておき食材を使ったご馳走で溢れています。一般的に、キリスト教圏でのイースター休暇期間は、日曜日から始まって約1週間。ラマダン明けのイード期間と共に覚えておきたいものですし、地域ごとの習慣の違いなどを雑談の種にするのもおすすめです。

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