Writingsコラム

ラマダンについての基礎知識

イスラム教徒にとっての大切な宗教行事、ラマダン。断食をするという、ぼんやりとしたイメージを抱いていると思いますが、なぜ行うのか、どう行うのかなど、詳しいことを知っていきましょう。

ラマダンとはイスラム暦の第9番目の月の名称です。イスラム暦(ヒジュラ)は月の動きを基準に置く太陰暦になります。そのため毎年ラマダンの日付は変わっていき、2024年は3月10日から4月8日の30日間となります。1ヶ月の間、日の出から日没まで水や食物を一切口にしない断食(サウム)を行います。本来的にはラマダンは月の名前ですが、最近ではイスラム教徒の中でも断食をラマダンと言うことも多くなってきているようです。

ラマダン中は飲食だけではなく、喫煙や喧嘩は禁止。飲酒はもともと禁じられていますが、性行為や悪口(ゴシップなど)、健康維持に関係のない薬の摂取、故意に唾などを吐く等々、不適切とされる行為は細かく定められ、全て禁じられています。ただし、乳幼児や重病人、高齢者、妊婦や授乳中・生理中の女性は免除されます。が、体調が回復次第、断食への参加は求められます。子供はだいたい6〜7歳くらいから時間を短くして参加し、体を慣らしていきます。イスラム教は貧しい者への寄進や奉仕活動を重んじているため、断食の代わりに行われています。

なぜ断食を行うかというかといえば、イスラム教徒の信仰心は、具体的な行動や動作に反映させなければならないという考え方がベースにあります。1日5回の礼拝をはじめ、一生に一度は聖地に行くなどの「行動」の一つとして、断食が求められているのです。断食という苦しい体験を、裕福な人も貧しい人も、皆が平等に共有していくことで、共同体としての一体感が得られます。食欲をはじめとした、あらゆる欲望を我慢することで、さまざまな害悪を追放できると信じられているため、イスラム教徒は30日間の苦しい断食を行うのです。

ラマダン期間の礼拝や断食などの苦行は、自制心を育て、より良い人間になるための修行だと考えられています。悪行より善行が多ければ天国へ行けるという教えのために、生きている間は地道に徳を積んでいくのです。ラマダン中、毎日祈りを続けていれば通常の数ヶ月分、さらに最後の10日間の「ライラトルカドル(みいつの夜)」と言われる特定の奇数日には1,000ヶ月分の徳を積んだことになるとか。ちなみにライラトルカドルの日は、信者にはっきりと知らされることはないようです。

世界中に信徒がいるイスラム教ですが、家事労働を女性が全て担っている地域は家族の食事の準備と自身の祈りのために睡眠時間が削られ、男性よりも負担が大きく、疲労が蓄積していくという話も聞かれます。また昼間の断食を終え、夜に一気に食べるのは肥満の原因ともなるため、断食したといえども痩せることはないのも悩みの種だとか。

そんなラマダンが終わると、イードというお祭りが行われます。3日間にわたって親類縁者が集まって宴会を開いたり、音楽を楽しみます。子供にはお小遣いやお菓子が振る舞われ、地域によっては学校が休みになるなど、嬉しい祝祭期間となっています。ちなみにイードは年2回あり、断食明けのイードの次は2ヶ月後にやってきます。国によってはどちらのイードも3日〜1週間程度の休暇期間になる場合があるので、ビジネスなどで付き合いのある方は心得ておきましょう。

アーカイブ

ページ上部へ戻る