Writingsコラム

過程を見せるプロセスエコノミー

従来、商品は出来上がったものを売るということだけで成り立っていました。これをアウトプットエコノミーとし、製造されるまでの過程を公開して収益を得ることはプロセスエコノミーと名付けられています。技術の進化により、完成品の品質は格段に高くなった今、差別化を図るためには、商品の背景を語り、その価値を高めようとする流れがあるようです。

プロセスエコノミーの典型的な例として、音楽の分野がわかりやすいかもしれません。かつて、楽曲は完成形だけが販売されていました。それから新人発掘番組が登場し、選考過程から公開されるようになり、デビューまでのプロセスが知られるようになりました。発信手段が少ない時代は、テレビがその役割を担っていましたが、現在ではSNSが発信のメインステージとなっているようです。ライブ配信やクラウドファンディング、有料オンラインサロン等を活用していけば、企業だけではなく、個人も楽曲やパフォーマンスを発表し、発売することが可能となっています。

ゲームやキャンプなど、商品化の有無に関わらず、ライブ配信で人気を博している人は数多くいます。視聴者が、配信者と自分の好きな分野を共有しているという連帯感もさることながら、配信者とコメントで交流できたりすることで、応援する気持ちが高まるようです。このように人々の応援する気持ちを、事業収益に結びつけることが、プロセスエコノミーの根幹です。

プロセスエコノミーを事業として行うためには、プロジェクトへの理解、事業者との気持ちの共有が必要となります。そのためには、より良いタイミングの情報提供、説明が必要です。そうすることで、歴史ある建築物の保全を目指すなど、目先の利益にこだわらない事業への協力も可能となります。アウトプットエコノミーのように、単なる消費者ではなく、商品の理解者であり、協力者であることがプロセスエコノミーの真髄です。

ただ、今のところ、従来型のアウトプットエコノミーの方が、事業規模も大きく、収益も上がることでしょう。漫画の場合、制作過程のライブ配信はほとんどの場合は無料です。しかし製作過程を見て、作者の意図などを読者が知ることで、作品を愛する気持ちが高まり、コミックスの売り上げにつながっていくことが考えられます。このようにアウトプットエコノミーにプロセスエコノミーの手法を組み合わせていくのは有効な販売促進方法です。ビジネスモデルとしては案外古くからあるプロセスエコノミーですから、上手に活用していきたいものです。

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