Writingsコラム

社会生活で求められる適応能力(1)

自然科学者のチャールズ・ダーウィンが『種の起源』に採り入れた「適者生存(最適者生存)」という概念があります。
その概念をもじった「強い者が生き延びたのではなく、変化に適応したものが生き延びたのだ」という言葉を時々耳にします。科学的に正しいかどうかはともかく、個人生活でも社会生活でも、とりわけビジネスではその通りだと感じることが多いです。
会社員は、会社の都合で何らかの環境変化に適応せざるを得なくなることがしばしばあります。

例えば、サテライトオフィスも含め分散していた各部署が大きな建屋に集約され、部署ごとにバラバラの方法で行われていた業務が新しい制度のもとで運営されるようになることがあります。その場合、統合される前までの慣れ親しんだやり方が通用しなくなります。
少人数で働いていた狭い環境から、大人数が集まる広い環境に移るのに伴い、人間関係や相性なども反映され実務ベースで評価されていた業績が、統合後は一律の仕組みの下で評価されるようになることもあります。上司の目が届く範囲には限りがあるので、大所帯になるに従い、そのような明確な仕組みを取り入れた方が効率性は増すことでしょう。と同時に、評価が下がる人や、以前の方が良かったと言う人が出てきます。
もちろん、「自由で裁量の余地がある」「コミュニケーションが密接である」など、小規模な組織に特有の良さはあります。一方、人間関係がなあなあで秩序が欠けていたり、割り振られている仕事量に社員間で偏りがあるといった問題も少なからずあるかもしれません。
小規模だった頃のメリットとデメリットを認めた上で、それでも慣れ親しんだ環境の方が良かったと言いたくなる気持ちも分かります。外部要因によって自分の行動を変えることには、痛みが伴うからです。
変化に直面したとき、その変化をどう捉えるかが重要になります。その意味で、冒頭の適者生存にまつわる言葉は示唆に富んでいます。
変化をなかなか受け入れられず、新しい職場環境になじむのに時間がかかれば、仕事の能率は下がるでしょう。一方、それまでの不透明な人事評価や非効率なのに続けられていた方法などにうんざりしていた人は、心機一転、新しい環境の方が働きやすいと感じるはずです。(次回につづく)

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