Writingsコラム

ダイバーシティについて(2)

近年、ダイバーシティ推進の提言が増えています。それに関連して思い浮かぶのが「262の法則」で、蟻や蜂など集団で生活する生き物にも似たような法則性が観られる点が大変興味深いです。

それは、餌、外敵、巣や卵、幼虫に関する何らかの有事の際やトラブルへの反応閾値の差(腰の重さ)として表れるのだそうで、餌の発見時に即座に動く蟻もいれば、反応が遅かったり無反応の蟻もいたり、巣穴の修復を率先して行う蟻がいる一方で我関せずの蟻もいるというわけで、「働き蟻」の優劣を一つの基準で安易に判断することはできないようです。要は課題ごとに対応する蟻が異なっており、緩やかな分業体制や交代制によって組織全体で効率性と生産性が維持されることが重要なのだそうです。

これは人間の組織でも見てとれます。誰しも得手・不得手がありますので、ある課題に対しては優秀な人材でも別の課題では成果を上げられなかったりします。また、ビジネス環境の変化やテクノロジーの進歩が早いため、従来の課題自体がなくなったり、新たな課題への対応が急務になったりと、課題の重要度や難易度も変わりやすいです。

課題が不変で全員が同じことを繰り返す場合、個々の優劣は見分けやすいかもしれませんが、262の法則は「課題ごとに、優秀、普通、ダメ(向かない)にあたるメンバーがいて、その割合は課題によって異なり、課題そのものの位置付けも変わる」というように解釈すると良いのでしょう。

ビジネスの外部環境がどんどん変わっていく状況では、ゼネラリストとして様々な分野にわたり平均的に優秀な人材を一律に育成するよりも、各自の得意分野を把握し、適材適所の役割分担を柔軟に行う方が有効かもしれません(ただし、業種業態にもよります)。競争が激しさを増す昨今、組織全体で効率性と生産性を上げるために人的資源管理を行い、その観点から人材の多様化を進めることが肝要です。(次回につづく)

参考文献:長谷川英祐著『働かないアリに意義がある』KADOKAWA

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