Writingsコラム

情けは人の為ならず(1)

ビジネスのコミュニケーションでは、論理がスッキリしていること、つまり要点が明確で誰もが納得しやすいと高評価を受けます。それは詰まるところ、同僚や顧客といったビジネス関係上の他者の立場を尊重し、相手にとって無駄な時間や労力が発生するのを避けられるからです。

また、優秀なビジネスパーソンは「あの人とは働きやすい」「確実な仕事ぶりなので、またお願いしたい」と周囲から言われますが、それもやはり一緒に過ごすと有意義な時間が流れ、望ましい成果に繋がるからでしょう。

とは言え、表向きはパーフェクトに映っていても、「ああでもない、こうでもない、この場合はどうしたら良いだろう」と影ながら思い悩むのが人間です。一貫した論理で物事が進むように努めても、試行錯誤して見出した最良と思うやり方が不正解ということもあります。

とりわけマネジメントに関わる仕事では、上司や部下、社内の他部署、そして顧客との間で「(この相手には)こうするのが良い」という自分なりの論理や指針が揺れ動きます。そのブレる(あるいはブレない)姿勢は仕事の信頼関係に直結しますので、いつも落ち着いて本質を捉えたいものです。

さて、ふと改めて、昔から言われてきた「ことわざ」は、様々な負荷を抱える現代人にとって一つの指針になるのだと気が付きました。例えば、しばしば耳にする「情けは人の為ならず」ですが、その意味は「人に情けをかけると、その人のためになるだけでなく、やがて巡り巡って自分に返ってくる」です。

利己主義なのか利他主義なのかはともかく、「他者には親切にせよ、誠心誠意対応せよ、そうすれば悪いようにはならないだろう」ということで、対人関係の真理を言い表しています。

この「情け」ですが、ビジネスのコミュニケーションにおいてはどんな含意が読み取れるでしょうか。(次回につづく)

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