Writingsコラム

情けは人の為ならず(4)

社員間のコミュニケーションが健全になるほど、企業は柔軟かつ基盤のしっかりした組織になると考えられます。

そこに着目し、共助の関係性を可視化する仕組みを提供するビジネスも登場しています。正の外部性をもたらす行為を社員が評価し合い、助けてくれた同僚にその内容に応じて「ピアボーナス」をお礼に贈るというものです(参考:2019/11/2付け日本経済新聞「仲間とつながる 喜びがモチベーション(働き方進化論)」)。

そのような仕組みを社内制度に取り入れるか否かに関わらず、助け合える雰囲気や労い合う風通しの良さが、社内文化として根付いている企業は強いでしょう。

では、社内だけでなく、対外的には「情けは人の為ならず」はどうでしょうか。急に無理難題を言ってくる取引先や、要望がころころと変わる顧客はいるものです。そういった相手にどう対応すれば良いのか、頭を抱える場面もありますね。

営業の能力が問われるところですが、自社あるいは自分の立場を明確にした上で無理のない範囲で誠心誠意対応すれば、その姿勢は相手に伝わり、少なからず記憶に残ります。たとえ相手が理不尽で一方的だったとしても、他の誰かは見ているものです。結果、巡り巡って個人的にも企業としてもイメージ向上に繋がるのではないでしょうか。

留意すべきは、社内であれ社外であれ、対人関係においては目先の利益を追わない方が良いということです。ましてや、甘い見通しや自己都合の安易な打算、勝手な期待などは、遅かれ早かれ見透かされて信用を損ない、それによって中長期的に利益を得る機会が失われるかもしれません。

誰でも多少は期待するものですが、そうであっても相手には相手の事情があるため、見返りがないのは想定内だと早めに割り切った方が良いでしょう。期待感は「もしかすると、その内に良いことがあるかもしれない」という程度に留め、相手本位に行動しても一旦忘れるくらいが調度良いのだと思います。ビジネスでは利害が複雑に絡むケースも多いため、なおのことです。

社内外の対人関係では、どんな状況に直面しても受け止める胆力をもち、採り得る最適な対応策を検討する。その上で、筋が通った一貫した論理のもと行動する。そして、「情けは人の為ならず」の姿勢を続けていれば、自ずと明るい展望が眼前に広がっていくものと思います。さらに、個々の成長が組織の成果に繋がり、継続的に利益を生み出せるのが理想です。

今回は行動指針としての「情けは人の為ならず」について考えてみました。この延長線上で、チーム内での「心理的安全性」と、そのためにリーダーが備えるべき「心理的柔軟性」も興味深いテーマですので、またの機会に取り上げてみます。

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