Writingsコラム

伝統工芸技術の源流は

日本各地、興味の種は尽きません。できれば旅人として巡ってみたいものですが、東京には全国各地のアンテナショップがたくさんあります。その中から見えた、小さな発見をお伝えしていきます。

旅の起点は日本橋。富山県のアンテナショップである「日本橋とやま館」は、日本橋すぐそばにあります。

富山といって思い浮かぶのは、寒ブリやホタルイカ、白エビなどの日本海の海の幸。立山連峰の山並み、温泉、日本酒……どれも心惹かれるものですが、ショップを訪れると意外な「名物」が。

時折、店内で響く「おりん」の音。仏壇前に置かれているお椀型の仏具ですが、デザインがモダンなせいか古臭さを感じません。仏具という思い込みを取り去ると、澄んだ音色も形も新鮮に感じられます。

富山県高岡市は銅、鉄、錫(すず)などの鋳物(いもの)生産地。ここで作られる高岡銅器は、国内の銅器生産額の9割を占めています。江戸時代から、お寺の梵鐘や仏具、茶道具、酒器などが作られていましたが、今やその枠を飛び越え、現代的なデザインのインテリア用品、テーブルウエアなどになって、幅広く愛されています。

高岡の伝統工芸の技は、木工、漆工、金工分野も見逃せません。これらの技術の集大成が仏壇。富山県など北陸地方の主流は、浄土真宗の西本願寺と東本願寺の阿弥陀堂の宮殿を模した「金仏壇」。高岡では西本願寺のものが多く、金箔を多用し、精巧な彫刻がなされた仏壇は豪華で荘厳です。

木工の技術は欄間等の華麗な彫刻に活用され、なんと今ではシャンデリアなども作られているとか。

漆器作りは螺鈿(らでん)技術を発達させました。輝く貝が埋め込まれた螺鈿の美しさは多くの人を魅了し、アクセサリーやスマホケースなどで人気を博しています。

こうして今も愛される伝統的技術を育んだのは、伝統的な仏壇作りだったと聞くと、仏壇を見る目が少し変わってきます。

日本橋とやま館 : 東京都中央区日本橋室町1-2-6 日本橋大栄ビル1  https://toyamakan.jp/

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