Writingsコラム

これからのトイレの話

よく言われることですが、諸外国に比べて日本のトイレは総じてレベルが高いようです。清潔さ、節水機能、使用中に水音を流す機能、自動で蓋の開閉や洗浄をしてくれる、トイレットペーパーを一緒に流すことができるなど、たくさん挙げられますが、最も特徴的なのがウォシュレットに代表される温水洗浄機能付き便座の存在かもしれません。

日本で温水洗浄機能付き便座が発売されたのは、1964年。伊奈製陶(現LIXIL)がスイス製クロス・オ・マットを、東洋陶器(現TOTO)が米国製ウォッシュ・エアシートを輸入し、販売しました。国産は伊奈製陶が1967年、東洋陶器が1969年に始めています。1982年TOTOの「お尻だって洗ってほしい」のCMで温水洗浄便座が一般に認知され、ウォシュレットという商品名がこれの代名詞となりました。今では2人以上の世帯への普及率は80.2% (※) になっています。

トイレの世界でもIoT化が進んでおり、代表的なのがオフィスにおけるトイレの使用状況を、個人のスマホで検知することができるシステムです。実はこのシステムは、簡単なセンサーとアプリで設置できるため、手作り感覚で社内開発されることもあるようです。

アメリカには清潔なトイレをスマホの地図上に示してくれる月額制サービスがあります。2017年からGood2Go社で作成された地図アプリを使用するプランが、1か月0.99ドル、2.99ドル、19.99ドルの3パターンで展開されましたが、残念ながら現在は新型コロナウィルスの影響のために計画が滞っています。

大型イベント開催時や災害時に移動トイレが設置されますが、より一層IoT化が進むことが期待されています。必要なエリア、混雑状況を把握しやすいことはもちろんですが、スマホでQRコード等をかざすことで鍵の開閉をハンズフリーで行うことができれば、各種感染症へのリスクも低くなります。これだけではなく、清掃状況や節水への管理も期待されていますから、これから伸びていく余地は十分にありそうです。

米国航空宇宙局NASAが進めている有人月面着陸計画「アルテミス」では、微小重力と月の重力に対応した新型トイレのデザインを公募しました。「人間の排泄物を捕獲し格納する、斬新でこれまでにないアプローチを期待する」というもので、最優秀賞には2万ドルが贈られます。さらに「宇宙飛行士がトイレに頭を突っ込まないで嘔吐できる」デザインにはボーナスポイントが与えられるようです。締め切りは2020年8月17日でしたが、どんなアイディアが世界中から集まったのか、NASAの発表が待たれます。

※内閣府2018年3月消費動向調査

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