Writingsコラム

高知県にある先取りの気風

幕末、薩長同盟や大政奉還などで大活躍した坂本龍馬の出身地は高知県。旧来の常識にとらわれない、時代を先取りした生き方を貫いた人物ですが、高知県にはその気風が流れているのかもしれません。

清流として有名な四万十川など、豊かな自然に恵まれていますが、人口はあまり多くなく、大きな工業地域のない農業主体の県といえます。しかし、地域特性をブランド化した「馬路(うまじ)村」という成功例を持っています。

高知県東部、標高1,000m級の山に隔たれ、高知市までは車で2時間もかかる山間の馬路村。97%を森林が占め、林業主体の村でしたが、柚子を活かした村おこしで一躍全国区となりました。柚子を使ったポン酢や柚子胡椒、清涼飲料など、生産だけではなく、加工、販売と一貫した流れを作り、村そのものをブランド化するという販売戦略を打ち立てました。今では当たり前になったこの手法を、30年ほど前から自治体が始めたという先進性は素晴らしいものです。

現在、高知県が取り組んでいるのは「Next次世代型施設園芸プロジェクト」。プロジェクトでは、高知県特産のナス、ミョウガ、ピーマンなど、ビニールハウス等の施設で栽培される農作物の情報を、各農家施設に設置されたセンサーや画像からデータ収集し、クラウドに集積し、栽培に最適なモデルを農家に提供するという農業のインターネット化(IoP※)を目指します。

一部の先進的な農家では、個別にICT(情報通信技術)関連企業のサービスを受け、活用していますが、県主体での取り組みは初めてです。2027年までに、これらの生産高を現621億円規模から160億円(比25%)ほど引き上げることを目標としているのだとか。

データを駆使した農業は、国外の大規模農業では当たり前になっていますが、国内農業ではまだまだ普及していないのが現状のようです。この高知県の取り組みが、実際に役立つモデルを構築すれば、全国の農家に普及していく弾みとなります。大学、JAと連携して行われるこのプロジェクトの成果が期待されます。

※このプロジェクトは、IoP(Internet of Plants/植物のインターネット化)をキーワードに展開されています。

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