Writingsコラム

無意識の差別マイクロ・アグレッションに気づく

保育士は女性であることが「普通」だと思っていたり、名医は男性だと思い込んでいため、「男性なんですね」「女性なんだ」などという発言をしてしまう。また「日本人なのに英語が上手ですね」など言われて違和感を覚えた……等々。これら、性差や国籍、人種、宗教など特定の属性の人に対し、思い込みや無理解、差別心などを無自覚に抱いて発言し、相手を傷つけることをマイクロ・アグレッションと言います。

マイクロ・アグレッションの少々手こずる点は、発言者に明確な悪意はないということです。一見、褒めているように見えても、発言者の視野の狭さや環境的要因によって無自覚に育てられた差別性が、小さな(マイクロ)攻撃性(アグレッション)となって、相手を困惑させ、喉に刺さった棘のように、じわじわと心を傷つけます。

悪意を持って相手を攻撃することはマイクロ・アサルトと言います。この場合、発言者は「軽いイジリで、コミュニケーションの一環だった」などと言い訳しますが、第三者の目から見れば、はっきりとした悪意があるのは確実で、攻撃性が高い分、言われた側は激しく傷つくことになります。

マイクロ・アサルトはわかりやすいものですが、マイクロ・アグレッションは、なかなか自覚できません。例えば、発言者と同じ考えを持っている集団に、被害者が加入すると問題が顕在化し、意識しやすくなります。この場合、放置を続けると問題は大きくなります。傷ついている人が本心を隠して仕事をし続けると、前向きな生産性は生まれにくくなりますし、言われた本人は傷ついていることを言い出しにくいものです。一番いい方法は、発言者を第三者が客観的視点で指摘して「やめよう」とルール化することです。難しいことですが、他者の立場をよく考えることを習慣化していくことが解決の糸口となるでしょう。

自分自身、気づいていない偏った考え方を、アンコンシャス・バイアスと言いますが、こうしたステレオタイプの思い込みは、自由な発想を妨げます。この問題は世界の大企業が早々に気づいており、多様なスタッフを要するグーグルやフェイスブック、マイクロソフトなどIT企業を中心に「気付き」を促進するセミナーを開いています。

世界中、誰もがアンコンシャス・バイアスを有しています。それを自覚することこそが、多様な社会への第一歩です。まずは自分自身の中に思い込みがないか問いかけること。思い込みにとらわれない、自由で思いやりのある視点からの新しい発想が、今、求められています。

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