Writingsコラム

宮崎のリゾート、今昔

温暖な気候で知られる宮崎ですが、特に宮崎市南東部の海岸にある青島周辺は、南国らしい白浜が続いているため、明治時代からリゾート地として親しまれてきました。戦後、1960年代頃から高度成長期の勢いに乗り、さらに繁栄。昭和天皇の次女である島津貴子様が、新婚旅行(1960年)で青島を訪れたこともあり、昭和の時代の観光人気は非常に高い場所でした。

青島は、砂岩と泥岩が重なったところが隆起してできた小さな島で、天然記念物となっています。周囲は860m、高さは最大6m。島の周囲は奇岩に囲まれています。「鬼の洗濯岩」と呼ばれる一帯は、波が洗ったせいで、砂岩部分が侵食されてなくなり、干潮時には泥岩部分が浮き上がっているように見えます。また、青島は周囲の植性とは少々違った熱帯・亜熱帯の植物が群生しています。人は住んでおらず、青島神社が島の真ん中に建っています。

青島神社は縁結びの神様として知られ、島全体がパワースポットだとも言われています。古代から神聖な場所で、人々の願いを込めた貝殻や土器などが出土しています。江戸時代頃までは神域として守られ、一般の人は年に数日しか立ち入れなかったようですが、明治時代に解禁され、そこで一気に人気が高まったようです。

宮崎にはもう一つ、有名なパワースポットがあります。阿蘇の溶岩が侵食されて形作られた高千穂峡。そこに高千穂神社があります。農業や厄祓をはじめ、ここでも縁結びのご利益が得られると人気です。天照大神が怒って閉じこもってしまった天岩戸(あめのいわと)を御神体とする天岩戸神社、八百万の神々が集まってどうしたらいいかと相談した天安河原(あまのやすがわら)などがあり、神話の世界を堪能できます。

国の名勝・天然記念物に指定されている高千穂峡では、日本の滝100選に選定されている真名井の滝や、巨大な奇岩・鬼八の力石や、高さ50〜100mにも及ぶ、柱のような巨石を見ることができます。これら自然の神秘とでもいうべき景勝は、写真映えも抜群。多くの観光客をひきつけています。

実は、かつて宮崎では、官民一体で大規模なリゾート事業が展開されていました。1987年リゾート法第1号指定を受け、「宮崎日南海外リゾート構想」が開始。多大な行政の支援を受けて出来上がったのが「フェニックス・シーガイア・リゾート」でした。広大な敷地にゴルフ場や巨大室内プール、ホテルなどを備えた大型施設が建設されました。が、この事業は甘い見通しとニーズの読み違えで、一度も黒字化することなく2001年経営破綻。投資額の1割に満たない金額でアメリカのリップルウッド・ホールディングスに譲渡されました。現在は外資のシェラトン・グランデ・オーシャンリゾートとして新しい道を歩き始めています。

紆余曲折があったものの、旅の形は少し前まで主流であった、あれこれ詰め込んだパッケージ式から、枠にとらわれないオーダーメイド式へと変化しています。絶景の海や山をはじめとした豊かな自然を有する宮崎県ですから、これからの多様な旅の形態に応えてくれるに違いありません。

アーカイブ

ページ上部へ戻る