Writingsコラム

まずは主観で語ってみるナラティブアプローチ

上司と部下、部署間などの関係がギクシャクすることもあるかと思います。年代や専門性の違いなど、対立の原因を探り、解決へと導く手段として、ナラティブアプローチがあります。どのような方法なのか、概略を解説していきます。

ナラティブ(narrative)とは日本語に翻訳すると「物語」や「語り」。問題を抱える当事者自身の「語り」を通して、物事を解明していく手法です。カウンセリングとは違い、話の聞き手は専門家とは限りません。語る人の話をフラットな立場で聞くのがナラティブアプローチです。

まずは本人の語りたいように話すことから始まります。他人の目を意識することなく、主観で物事を語ってもらいます。この第一段階を、遮ることなく傾聴することが、ナラティブアプローチの特徴とも言えることで、語られた物語はドミナント・ストーリーと呼びます。

このドミナント・ストーリーの中には、本人が抱えている問題が含まれています。「あの人は不親切だ」というような思い込みや、何事もマイナスに捉えてしまうなどという思考の癖などが現れます。物事を都合よくつなぎ合わせたり、客観的に捉えることができていない認知の歪みが見つかることもあります。物事を脚色する場合もあるでしょう。こうして話していくうちに自分の中の矛盾に気づくこともありますから、ドミナント・ストーリーの聞き手は、自分の意見をさし挟むことなく、ありのままの話の記録を取ることに専念します。

次に、ドミナント・ストーリーに内在している問題を、聞き手が客観的な視点で外在化していきます。ここで大切なことは、上からの立場で行わないことです。対等な立場で、物語った本人を否定せずに、語った物語の誤解しているところ、偏っている視点などを洗い出していきます。

「上司に嫌われている」と悩んでいるならば、「どのような行動から嫌われたと思うか」など、具体的な例を思い出してもらうのも一つの方法です。また、理屈に合わない事実が出てくることもあります。それは当事者が見落としていた事実である場合が多く、ここに着目して問題解決へと導くことができます。

ナラティブアプローチを試してみても、具体的な解決策は出ないことがあります。ただ、対話することで双方の理解が深まり、仲間として対等性を獲得することができるのは確かです。立場や状況の違いを知ることで、プロジェクト全体が把握でき、連携がうまくいくというメリットも考えられます。

対話が足りていないと誤解が生まれます。相手のことを理解する第一歩として、ナラティブアプローチという手法を使ってみてはいかがでしょうか。

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