Writingsコラム

高額ヴァイオリンの基礎知識

たまに、何億円という高額なヴァイオリンが売買されたというニュースを目にします。その際、必ず出るのが「ストラディヴァリウス」という名前です。ヴァイオリンは高いものというイメージがありますが、ずば抜けて高価なヴァイオリンというのは、いったいどれくらいあるのでしょうか?

ヴァイオリンは16世紀初頭に誕生したと考えられています。現存する最古のヴァイオリンは、ガスパロ・ダ・サロが制作したもの。2010年のオークションで5,425万円の値をつけています。

17世紀、北イタリアのクレモナで、アマティ、ストラディヴァリ、グァルネリなど、有名な音楽制作工房が登場します。その中で、アンドレア・アマティはヴァイオリン制作の始祖とされ、グァルネリ、ストラディヴァリなど、たくさんの弟子を育てました。アマティから始まる師弟関係から生まれたヴァイオリンは、工房があった都市から「クレモナ・スクール」と呼ばれ、現代の評価では別格扱いです。ニュースにならないレベルのものでも、取引価格は3,000万円〜1億円くらいだとか。アマティの工房では、孫のニコロが最高峰を築き、「アラード」という名器が現存します。残念なことにアマティの作品は現存数が少なく、ほとんどが博物館などで保管されています。

グァルネリは一族で楽器製作に取り組みましたが、アマティ同様、一族のみならず、ストラディヴァリをはじめとした多くの職人を育てました。グァルネリ一族の中では、バルトロメオ・ジュゼッペ・アントニオ・グァルネリ(通称:デル・ジェス)が制作した「ヴュータン」が、史上最高額16億円という値をつけています。制作から300年たった現在でも修理跡が一つもないとか。この、グァルネリ一族の雄であるデル・ジェスの作ったヴァイオリンは200挺ほどが伝わっています。迫力ある大音と落ち着いた音色、全ての音が均一に出るバランスの良さが魅力だそうです。

さて、ヴァイオリンに詳しくない人にも耳に馴染んでいるストラディヴァリウスですが、透明感があり、明るく深い音色で、著名な演奏家たちを虜にしています。特にストラディヴァリ一族の中でも優れていたアントニオ・ストラディヴァリが作った一連の作品は「ストラド」と呼ばれ、16世紀初頭に作ったものが特に優れていると言われてます。代表作の「レディー・ブラント」は12億円。現存しているストラディヴァリウスは600挺程度で、世界中の演奏家が弾くことを切望しています。

ちなみにストラディヴァリウスの最高金額は、ヴァイオリンではなくヴィオラになります。ヴィオラは10挺程度しか現存していないというのが理由の一つですが、「マクドナルド」と名付けられた名器は、2014年サザビーズで最低落札価格45億円と設定されましたが、あまりにも高額過ぎて落札者が出ませんでした。売買が成立したらきっとニュースになることでしょうから、誰が買うのか楽しみに待っていましょう。

アーカイブ

ページ上部へ戻る