Writingsコラム

ノーマライゼーションという考え方

段差や心理的垣根をなくすバリアフリー、誰もが使いやすいユニバーサルデザインなど、障害者や高齢者が生活しやすい環境を整えることは、社会においての重要な課題です。それらの根底にあるのは、ノーマライゼーションという考え方なのです。

ノーマライゼーション(normalization)の単語としての意味は、正常化、標準化です。1959年、デンマークの社会省で働くニルス・エリス・バンク-ミケルセンが、知的障害者の生活改善を行うための法律を改正するため、ノーマライゼーションという言葉を盛り込みました。これをスウェーデンのベンクト・ニリィエが国際的に広め、「障害を持つ者、持たない者が等しく生活できるようにすること」という福祉用語として普及していきます。

バリアフリーは、当初、段差の解消など、物理的な意味合いで使われていました。そこから心理的な意味が加わり、今では社会などの大きな枠組みの中で障壁(バリア)をなくすという意味合いに変化してきました。

ユニバーサルデザインは、性別・国籍・年齢・人種などにとらわれない、全ての人が利用しやすいデザインを設計段階から考えるという思考手法です。既存品を改良していくことから始まったバリアフリーよりも、もっと本質的なデザイン思考から生まれています。言語が違っても理解しやすいピクトグラムの表示など、ユニバーサルデザインは最初の段階から組み込まれているものです。

こういった製品やシステムが社会に浸透してくると、実はその方が誰にとっても便利であるという事実に気づきます。例えば、車椅子の人が利用しやすいようにという目的で整備されたバリアフリー環境は、ベビーカーやカートが通行しやすいものですし、スマートフォンの音声入力は目の見えない人だけではなく、入力に不慣れな人も利用しやすくなりました。

ノーマライゼーションは、それまで追いやられていた障害者の生活の質を標準的なものにする目的で提唱されました。それは障害者を特別視することではなく、全ての人と同じように選択肢をたくさん持てることです。

ある日突然、病気やケガで働きにくくなることも起こり得ます。不具合が起きたときに支えてくれる体制があることは、生きていく上での安心感につながります。誰にとっても生きやすい社会は、ノーマライゼーションという考え方を軸にしていくべきなのかもしれません。

アーカイブ

ページ上部へ戻る