Writingsコラム

天然ガスの宝庫カタール

2022年サッカーW杯の開催国として注目されているカタール。アラビア半島にある国という、ぼんやりとした印象を持つ人が多いと思います。いったいどんな国なのか、簡単にご紹介いたします。

大きなアラビア半島からちょっとだけ突き出た半島の一つがカタールで、だいたい秋田県くらいの面積です。アラビア半島はサウジアラビア王国が大半を占めています。その中でカタール、アラブ首長国連邦(UAE)、クエートの三国は、面積はとても小さいものの、石油や天然ガスなど、豊かな天然資源を有するために、世界経済に多大な影響を与える存在となっています。

カタールの国土の大半は砂地で緑はほとんど生えていません。全土が海抜100m以下で、ひたすら平坦な砂漠が広がっていると思って間違いないでしょう。水道水は全て海水を濾過したものを使っています。首都ドーハに人口の半数が集まっていて、医療や教育は無償。外国人労働者の割合がとても多く、人口の9割を占めるとか。

カタールの天然ガスの産出量は世界5位(2022年現在)ですが、埋蔵量は世界2位。世界最大と言われるロシアのウレンゴイガス田とほぼ同程度のノースフィールドガス田を所有しています。ちなみに天然ガスの埋蔵量1位はイランとロシア。ウクライナ侵攻の制裁措置で、ロシアからの天然ガス輸入をストップしている欧州各国は、代替え国として、カタールと次々と長期契約を結び始めています。

日本もカタールから天然ガスを購入していました。カタールはもともとアジア向け輸出の長期契約をメインとしており、東京電力HGと中部電力の火力発電会社JERAの二社と25年間長期契約を結んでいました。しかし2021年10月に決定された第6次エネルギー計画において、天然ガスの使用比率を27%から20%程度に減らすという方針に従って、カタールとの契約を更新しませんでした。

天然ガスはパイプラインでそのまま送る方法と、冷却してタンカーなどで運ぶ方法があります。-162℃に冷却された天然ガスの体積は600分の1となり、液化天然ガス(LNG)になります。LNGを火力発電に使用すると、二酸化炭素、窒素酸化物、硫黄酸化物、煤塵(ばいじん)の量が石油や石炭に比べて格段に少なくなります。まだまだ火力発電を維持しなければならない現状では、環境負荷の低いLNGの需要は世界的に高まっています。

この豊富な天然ガスが大きな力となり、カタールの首都ドーハの発展はアラブ首長国連邦の首都ドバイに次ぐ勢いがあると言われています。リゾート、観光産業に力を入れているため、W杯開催でさらに弾みがつくでしょう。さらなる国力強化のために、教育に力を入れるという政策も進行中です。これからもカタールからは目が離せなくなることは間違いないようです。

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