Writingsコラム

福岡県 2つのゼロウェイスト

ゼロウェイスト活動とは、捨てるゴミをゼロにする世界規模の取り組みです。1996年、世界で初めてオーストラリアの首都・キャンベラがゼロウェイスト宣言を発表し、カナダのトロント、アメリカのサンフランシスコなどが続きました。日本では2003年徳島県勝浦郡上勝町が先陣を切り、2008年福岡県では最初となるゼロウェイスト宣言を三潴郡大木町が発表しました。他に、熊本県水俣市、奈良県斑鳩町が発表していますが、なんと福岡県では2つの自治体が取り組んでいるのです。

久留米市と柳川市の間にある大木町は、人口14,000人に満たない小さな町です。ですが全国で2番目となる2008年に「もったいない宣言」というゼロウェイストの方針を表明しました。燃やすゴミ以外を29種類に分別し、使用済みの缶、ペットボトル、生ゴミ、調理油、紙おむつ、時計や布団など、あらゆる分野のゴミを徹底的にリサイクルしています。

そもそも大木町がゼロウェイストに舵を切った理由は、町内にゴミ焼却施設がなく、他の自治体に持ち込み、費用を払って焼却処理をしていたからです。また、し尿処理は海洋廃棄していたのですが、これが法律上、禁止となってしまいました。一時、町は国が指導するガス化溶解炉、し尿プラントの建設をすることに決めましたが、財政の問題を考慮した上で、将来的に住民のためになると、ゴミを減らし、循環させていくという選択をしました。

大木町では、一般家庭から出る生ゴミを、一部の生産農家から発生したキノコのクズなどと一緒にして、循環センターで液肥を作っています。発酵時にできるバイオガス電力は、発酵に必要な加温や発酵樽の洗浄に使われています。液肥は米、麦などの肥料として使われ、この肥料を使って育った米は「環のめぐみ」と名付けられ、住民に特別価格で販売されているそうです。

大木町に続いて、福岡県内で二番目に宣言を発表したのは、みやま市です。2020年、市は資源循環のまちづくりを掲げました。廃校になった小学校跡に建築されたバイオマスセンターで、生ゴミ、し尿・浄化槽汚泥から、電力と液肥「みのるん」を作り出し、農作物栽培へ活用しています。バイオマスへの取り組みは、結果的に排出量、処理費用の削減にも繋がっているようです。そして市が出資するみやまスマートエネルギー株式会社は、市内に設置された太陽光パネルから得られた電気を市民が使うといった、エネルギーの地産地消を狙います。

さらに2021年、みやま市は温室効果ガス排出量実質ゼロを2050年までに目指す、ゼロカーボン宣言を出しました。2022年には立命館アジア太平洋大学(APU)との協力を発表。今後、留学生を交えた環境対策やフィールドワーク等の研究・教育が行われる予定だとか。住民のみならず、他地域の若い世代の視点が加わることで、環境問題に対する研究と実践が進んでいくことが期待されています。

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