Writingsコラム

生き方を考える学び場フォルケホイスコーレ

年が改まり、今年の目標について考えることがあったでしょうか。年始だからといって必ず目標を作る必要はありませんが、目標を通して自分自身を見直すことも時には必要なのかもしれません。そうした場合に役に立つかもしれない、デンマーク発のフォルケホイスコーレという「学校」のシステムをご紹介します。

1844年、絶対王政から民主主義へと移行する時期。近代デンマーク精神の父と言われるニコライ・フレデリク・セヴェリン・グルントヴィが、全国民が民主主義を理解する必要があると考え、フォルケホイスコーレという国民学校を設立しました。17歳以上であれば誰でも入学することができ、学びたい教科を納得するまで学ぶことができます。ここでは入学試験をはじめ、科目ごとの試験もなく、単位取得も義務付けられてはいません。学べる分野は、文学、歴史、心理学、環境、IT、コミュニケーション、教育、音楽、演劇、スポーツ、アウトドア、ダンス、絵画、写真、哲学、政治学、国際文化など多岐に渡っています。ここで様々な学びを経験し、自分の適性を知るのが目的の一つ。

試験がないということは、人と競い合う必要がなくなるということです。競争から解放されることで、純粋に学問を楽しめたり、自分自身の適性や内面と向き合うことができ、人生においての軸が固まっていくのでしょう。そうすることで目標を抱き、実現へ向けて歩き出す人もいます。大きなことに取り組まなくても、今まで知ることのなかった事象に触れることで、何かしらの気づきを得られるようです。

フォルケホイスコーレは全寮制で、授業以外でも性別や世代にとらわれないディスカッションや交流などが行われます。食事時や自由時間に教師や学生と話し合うことで、各々の背景や考え方を知ることも学びの一つです。森の中で散歩をしたり、湖で泳いでみたり、パーティーに参加するなど、すべての体験が学びの種となります。

デンマークには70校ほどあり、国の補助もあるため、学費はかなり手頃です。16〜18歳の若者が、5か月程度をフォルケホイスコーレで過ごし、その後の進路を決めるようです。留学生でも費用は大体同じだということで、世界各地から性別や年代を超えて学生が集まっています。

フォルケホイスコーレをモデルに、日本でも2020年、北海道東川町で「人生の学校」が設立されました。忙しい社会人に向けて7泊8日のコースから、10週間まで。特に休みにくい人のために、週末だけの週末フォルケという形式も試験的に行われた模様です。他にも隠岐・西之島や、神奈川県・鎌倉でもプロジェクトが立ち上がっており、設立の検討は国内各地に広がりつつあるようです。

人生の中で、過去の選択の良し悪しや、これから待ち受けていることについて考えることはあります。そんなときは、「人生のための学校」と言われるフォルケホイスコーレのメソッドが参考になるかもしれません。

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