Writingsコラム

栃木県は、いちご王国!

栃木県は、いちごの収穫量日本一。昼と夜の寒暖差が大きく、冬の日照時間が長いことから、早くからハウス栽培に取り組んでいたため、1963年から半世紀の長きにわたって、いちごの収穫量1位の座を守り通しています。「いちご王国」を名乗る栃木県の取り組みはどのようなものなのでしょう。

いちご栽培は江戸時代末期にオランダから伝わり、各地で細々と路地栽培が続けられていました。路地栽培時代で有名だったのは、静岡県の久能(くのう)山の麓で石垣の輻射熱を利用して栽培されていた「石垣いちご」。ちなみに久能山には徳川家康を祀る久能山東照宮があります。栃木には日光東照宮がありますが、いちご栽培に関しては関係なさそうです。

栃木での栽培が本格化したのはハウス栽培を導入した時期が早かったからです。路地栽培のいちごの収穫期は5〜6月と限定されますが、温度をコントロールできるハウス栽培ならば、収穫期が調整できます。1950年代くらいから生産者、JA、行政が一体となって取り組み、現在のように11月から収穫できるようになりました。

1985年、ハウス栽培向きの品種として栃木からデビューしたのが「女峰(にょほう)」です。程よい酸味があり、形がしっかりしていたため、1990年代にショートケーキに乗っていたいちごは、ほぼ「女峰」といっても過言ではありませんでした。生産者にとっては、栽培のしやすさも魅力の一つだったようです。

そして1996年に「とちおとめ」が誕生。果実はさらに大きくなり、味も向上しました。「女峰」よりも育てやすかったため、あっという間に全国に広まります。現在、「とちおとめ」は全国の作付け面積トップで、栃木県でも収穫量No.1を誇ります。さらに2013年には「スカイベリー」という高級品種が生まれ、こちらは主に贈答用として重用されています。同じように2019年には見た目が真っ白という「ミルキーベリー」が登場。従来のいちごの赤との組み合わせで紅白が成立するため、おめでたい時のプレゼントとして喜ばれています。

栃木県が次々と人気品種を生み出すことができた理由は、全国で唯一の「いちご研究所」という県立農業試験場があるからです。2008年に設立され、栽培しやすさや品質の良さだけではなく、経営や流通面からの要望を汲み取った品種を開発するという役割を担っています。国内では果物離れと言われているものの、食べやすいという理由もあって、いちごの消費は堅調です。また、アジア圏への輸出増という追い風が吹いています。これに乗るために、栃木県は新種開発と生産、そして国内外への売り込みに本腰を入れているのです。

2020年、切った断面がハート型に見える新品種「とちあいか」が出荷開始されました。収穫量全国一の「とちおとめ」に比べ、より病気に強く、収穫量が30%も上回るという有望株。「とちあいか」は今のところ県限定品種とした上で、徐々に他県へと解禁する戦略を立てているようです。まだ目にする機会は少ない「とちあいか」ですが、生産体制が整い、気軽に買えるようになる時が来るのが楽しみです。

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