Writingsコラム

ESGという未来志向の姿勢

近年、企業方針や決算報告、投資分野でよく目にするようになったのが、ESGという言葉です。環境(Environment)、社会(Social)、企業統治(Governance)の頭文字で、2004年国連から投資先を選ぶ際に考慮すべき新しい要素として発表されました。これからの持続可能な社会のため、企業は利益のみを追求するのではなく、気候変動や人権問題などの世界的課題を考慮しなければならない。ESGへの取り組みがなされていない企業は、企業の価値を損なうリスクを抱えていることになる。そういった、未来を見据えた考え方です。

具体的には、「環境」は二酸化炭素排出削減やクリーンエネルギー利用、「社会」はワークライフバランスの実現やジェンダー平等や多様性の尊重、「企業統治」は適切な情報開示や法令遵守(コンプライアンス)等を示します。これらは、この4〜5年ですっかり常識的な考えとなりました。投資でもESGの原則を踏み外した企業にはリスクを抱えているという判断がなされており、ESG投資は世界的に伸びています。

持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals)であるSDGsも2015年に国連が採択した国際指標で、非常に似通った意味になっています。SDGsは世界中の人々すべてに向けた達成すべき目標で、ESGは先進国の企業経営と運営の方に焦点を当てていると考えたほうがいいでしょう。またESGは企業を評価する指標なので、投資家視点で用いられることが多くなっています。

ところが2024年の大統領選挙を控えたアメリカの共和党では「反ESG」が叫ばれました。ESG投資を「社会主義に目覚めた資本主義(woke capitalism)」と批判し、フロリダ州から共和党指名争いに参戦したデサンティス知事などが声高に唱えています。ちなみにwokeは日本語で言うところの「意識高い系」のように、環境問題などに取り組む姿勢を意地悪く揶揄する言葉として使われています。

これに対して、アメリカの金融業界は「反ESGはリスク」と捉え、共同で声明を出すなど批判を高めています。長期的視点を重視する投資家は、必ずESGを考慮しているのが現状ですし、これが世界の金融の主流だと捉えています。むしろ反ESGは、リスクとしてアメリカの価値を下げると懸念されています。

日本企業もESGに関しては常識と捉えており、将来的な成長戦略の一環となっています。仮に国内で反ESGの声が出たとしても、主要企業の経営判断に影響することは少ないだろうとも言われています。投資家からの投資は経営を安定させますし、クリーンエネルギーの選択や多様性を認める働き方などへの切り替えは、民間レベルではどんどん進んでいます。優秀な人材の確保や流失防止のためにも、企業は真剣に取り組んでいるというのが現状です。未来を作る潮流の一つとして、ESGを共有しておきましょう。

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