Writingsコラム

喪失との向き合い方

自分の力を存分に発揮できたチームの解散、信頼する上司の転勤など、職場での別れから喪失感を味わったことはありませんか。私生活では、失恋や離婚、家族やペットを失ったりと、一生の間に別れは必ず存在します。そうした現実にどう向き合えばいいのか、昔ながらの慣習を交えてご紹介いたします。

まずは「悲しい」「つらい」という自分の気持ちをしっかりと受け止めることが大切です。別れの内容がいかなることでも、無理に忘れようとしたり、平気なふりをし続けることは心に負荷がかかります。家族や親しい人に打ち明けたり、気持ちを文章にしてみたり、時には専門家を頼って、外に吐き出してみましょう。

特に、亡くなった人を思う気持ちは、大きな喪失感として自分の心を揺さぶります。失った人を悼む気持ちと、現実に対応していこうという二つの気持ちが重なって、精神的に非常に不安定になります。こうした状態をグリーフ(Grief)といい、こうした状態にある人に寄り添い、援助することをグリーフケアと言います。悩みのスパイラルから抜け出し、悲しみから再生していく力を得るためにカウンセリングは、遺族外来やグリーフケア外来で専門医が行なっていきます。

専門医に頼ることは少し大袈裟だと考える場合は、資格を持ったグリーフケアアドバイザーに話したり、悲嘆回復へのワークショップで同じ体験をした人たちと語り合うこともできます。グリーフケアに関する書籍も出版されているので、それを読んでみることもいいでしょう。

意外なことに、葬儀や日々の供養などもグリーフケアの一つです。仏教の場合、四十九日まで七日ごとに法要があります。現代では七日ごとの法要をしっかり行うことは少ないものですが、四十九日には参列者も多く集まり、個人を偲んで会食なども行われます。さらに百箇日、一周忌、三回忌……と間隔をおいて法要が行われ、遺族の様子を第三者が見守るシステムが確立されています。お盆休みに故郷に帰り、家族と顔をあわせる習慣も癒し効果の一環となっているのかもしれません。

関係者を集めてセレモニー化することで、気持ちの切り替えを行うのも有効な方法です。離婚や失恋などでは、明るく楽しいパーティーを行うことで、気持ちが切り替わることもあります。とはいえ、セレモニーを行ったからといって、全ての悲しみを瞬時に忘れ去ることはないでしょう。精神的な苦痛は、思い出し、乗り越えていくというステップを繰り返すことで薄れていくものです。悲しみが懐かしさに変わるまで、根気よく自分自身と向き合い、人と関わることで回復へのエネルギーを貯めていくしかありません。

孤独はネガティブな感情を増幅させてしまう危険性をはらんでいます。失ったことで悲しみやつらさを感じたら、内側に溜め込まず、他人の力を頼ることを恐れずに、外へ出していきましょう。

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