Writingsコラム

防災を視野に入れた業務管理を

2023年9月1日で、関東大震災から100年目となります。地震の規模はマグニチュード7.5、最大震度6でした。午前11時58分という時間に起きたため、建物の倒壊に加えて火災が頻発し、津波や土砂災害も発生。死者・行方不明者は10万5,000人という甚大な被害をもたらしました。

複数のプレートが重なるという地理的条件上、日本に地震は起こりやすいもので、小さな地震ならば我々はかなり慣れています。建築物の耐震基準も2011年の東日本大震災以降、厳しくなっているために、外国の事例のように簡単には倒壊しない構造になっています。しかし停電の場合はエレベーターやトイレが使用できないなど、インフラが滞れば必ず不具合は生じます。勤務しているオフィスビルが自家発電をしているか否か、高層ビルの場合は階段で地上に出る際、歩きやすい靴を用意しているか、もし出られない場合に簡易トイレの用意はあるかなど、もしもの時の備えを確認しておきましょう。

さらに近年、気温上昇の影響を受けて、局地的豪雨や竜巻、台風の巨大化などが起きやすくなっています。とはいえ地震に比べて、水害は予測しやすいのは幸いですから、気象情報に注意を払っていたいものです。交通機関が計画運休を行うことも多くなりました。こうした情報が流れてきた場合は、出張や出勤の見合わせなど、検討と決断が必要です。

利用する交通機関の特性を理解しておくことも必要かもしれません。例えば東海道新幹線は、定められた雨量以上(60mm/1時間)の雨が降ると、自動的に運転がストップするシステムとなっています。これは東海道新幹線の線路の約半分が、盛土の上に敷かれているためです。東海道新幹線だけが盛土の割合が極めて高く、大量の雨が降ると崩れる恐れがあります。ちなみに盛土の割合は、山陽新幹線で18%、上越新幹線に至っては1%にすぎません。JR東海も盛土強化対策を施すなどして運休の確率を低くする努力は重ねていますが、大雨は線路だけではなく周辺で起こる土砂崩れの恐れなども生じるため、安全確保のための運休は仕方ありません。

現代では、通信手段の確保も災害対策の重要な要素です。バッテリーの準備や充電場所の確認など、緊急時の電源確保を考えておきましょう。情報収集もSNSだけではなく、国土交通省の河川氾濫情報や各交通機関のサイトなど、積極的に正確な公開情報をチェックしに行くという姿勢も大切かもしれません。

災害は地震や豪雨だけではありません。空気が乾燥する季節は山火事の危険性も高まります。海外で多発している山火事は、決して他人事とは言えないでしょう。山火事は消火しにくい災害です。山歩きの際はもちろん、キャンプでの焚き火の始末の徹底など、人災を生じない努力は必要です。

私たちの生活を支えるインフラは、災害によって機能しなくなることがあります。一方的に不便さを嘆くよりも、維持管理に携わる方々の仕事への想像力と共感力を持ち、万が一の場合の事前対策を折に触れて考えていきたいものです。

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