Writingsコラム

秋の桜、コスモス

秋はコスモスの季節です。公園などに一面に咲き誇る姿は壮観ですが、線路脇や街路樹の横など、ちょっとした隙間に咲いていることも多いものです。ふと気づけばそばにいるコスモスについて、少し探ってみましょう。

コスモスの原産地はメキシコの高原地帯です。18世紀末、スペインのマドリードにある王立植物園に種が送られ、アントニオ・ホセ・カヴァニレスによってコスモスと名付けられました。花びらが秩序だって並んで咲く様子から、ギリシア語で調和、秩序、宇宙を意味する語が選ばれたようです。可憐でありながら丈夫なコスモスは、瞬く間にヨーロッパ中に広まります。

日本にやってきたのは明治時代。はっきりしたことはわかっていませんが、西洋美術を教えるために来日したイタリア人彫刻家ラグーザが、自宅に咲いていたコスモスの種を持ち込み、彼の愛弟子であった清原玉という女性にプレゼントしたという逸話が伝わっています。さらに二人は国内初の国際結婚を果たし、イタリアに渡った玉は女流画家として活躍したとか。

少し遅れて大正時代にやってきたのはキバナコスモスです。旺盛な繁殖力で、あっという間に全国に広がりました。同じ時期にやってきたチョコレートコスモスは日本の寒さには耐えられず、野生では適応できませんでした。しかし2000年に育種家・奥隆善(おくたかよし)が、学生時代に従来種のチョコレートコスモスと丈夫なキバナコスモスを掛け合わせたノエルルージュを開発。色はもちろん、ほのかにチョコレートの香りがする新しいコスモスは大ヒット。花束や庭先でよく見かけるようになりました。園芸に詳しい方は、奥隆善は著作も多数ある有名な園芸家であるのをよくご存知かもしれません。

さて、コスモスと似ているものの、駆除の対象となっている特定外来生物に指定されている植物があります。キバナコスモスによく似たオオキンケイギクで、栽培や生きたまま運搬することが禁止されています。

オオキンケイギクは北アメリカ原産の植物で、コスモスと違って5〜7月に花を咲かせます。見分けるのは、花の咲く時期と考えて間違いありません。庭先に咲いていた場合は、引き抜いて天日にさらす、袋に入れて腐らせるなどの対処が必要です。

コスモスも外来種ではあるものの、オオキンケイギクほど他の植物を押し除けて繁殖はしません。和名で秋桜(あきざくら)という呼称も与えられ、秋の季語として親しまれています。あえて秋桜を「コスモス」と読ませるヒット曲もあり、日本人の心に根付いた花になりました。

コスモスの花が咲く時期は9〜10月です。かわいらしいコスモスを眺めて、秋の気分を味わいたいものです。

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