Writingsコラム

鹿児島を象徴する存在、桜島

鹿児島といえば桜島。鹿児島市内のどこからでも眺めることができ、市街地からフェリーを使えば15分で行ける近距離にあります。噴煙を上げ続け、時に石を噴出させる桜島は、世界有数の活火山。どんな成り立ちでできたのか、簡単に解説していきます。

今から25,000万年ほど前、姶良火山(あいらかざん)が、山が吹き飛ぶほどの大爆発を起こし、窪地ができて、鹿児島湾(錦江湾)が誕生しました。この窪みはカルデラと言われ、桜島の近くでは熊本県阿蘇山が有名です。鹿児島湾は、一見そう見えませんが、実は巨大なカルデラなのです。

姶良カルデラは、何度か噴火活動を繰り返し、成長していきます。13,000年前にカルデラの周辺に子供の火山である桜島が出現。6,000年前まで、桜島の北にある北岳が活発な噴火活動が続きました。これが終わると南岳が活動し始め、現在の桜島の姿になっていきます。

桜島の噴火に関する一番古い記録は、764年の天平宝字の噴火になります。以降17回、島の形が変わるほどの大噴火を起こしています。現在、桜島と大隈(おおすみ)半島は陸続きですが、これは1914年の大正大噴火によるもの。この大噴火で5つの集落が埋没、3つの集落が火砕流で消失しました。これにより、島民の半数が移住を余儀なくされたといいます。

1946年に起こった昭和の大噴火は、溶岩は流しましたが爆発はしていないため、17回の大噴火には含まれてはいません。一度おさまった後、1955年ごろから火山灰の噴出を繰り返す活動が続き、現在に至っています。

周辺に住む人々は、多少の噴火では驚かなくなりましたが、降ってくる火山灰は洗濯物の外干しを諦めさせ、車は常に汚れてしまうなど、日常生活に支障をきたします。そのため住民は、噴火すると風向きを確認し、火山灰に備えることが習慣化されています。鹿児島市独自の仕組みとして、火山灰を入れる黄色い克灰袋(こくはいぶくろ)が無料配布され、集積所に置いておけば回収されるとか。

迷惑な火山灰ですが、逆にこれを利用したガラス製品やスクラブ化粧品、焼き肉プレートを開発し商品化するなどの試みがなされています。灰で魚の水分を吸収する灰干しという料理法を編み出したり、灰地に強く、世界一の大きさを誇る桜島大根を栽培したりと、上手に共存しています。

鹿児島は、夏は少々暑いものの、冬は暖かく過ごしやすい気候です。桜島の噴火は時に恐ろしいものですが、それ以上に豊かな自然からの恵みを享受しているため、おおらかで豪快な気質が育まれたと言われています。明治維新の偉人の一人である西郷隆盛も、豪快で憎めない人柄だったようですから、絶え間なく噴火する桜島の影響で、皆、肝が据わっているのかもしれません。

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