Writingsコラム

転職活動における「経験」の意味(2)

大手の優良企業が業績好調にも関わらず、将来的な業容の変化を見据えて中堅社員の早期退職を募集し、同時に中途採用や外部人材の登用を増やしているという記事を目にしました。同社の中堅社員の多くは新卒入社組であるとのことでした。

さて、企業にとって、新卒採用と中途採用の違いは何でしょうか。

前回も述べたように、新卒採用は未来に向けた人的投資であるため、どうしても不確実性が伴います。

採用プロセスを通じ、将来的に活躍できる資質を持ち、能力を伸ばしていけるかどうかを見極め、大いに期待して内定を出したとしても、内定の辞退はもとより、入社後、実績を上げるまで育ってくれるのか、はたまた教育期間の終了後に退社してしまわないか…ということも想定しておかなければなりません。

あくまで一般論ですが、どの企業においても新卒一括採用に際し、上記のような心配事は避けられません。人材の側から言い換えると、第一志望の企業に晴れて新卒で採用され、選ばれた同期の集団の中にいたからといって、数年後に全員が有望と評価されるとは限らないのです。

もちろん、将来のリーダー候補と目される社員は一定数育っているでしょうが、同時に全体の何割かは残念ながらそうではないと位置付けられます。企業側にとっても不都合な事態ですが、中途採用へのニーズはそのために顕在化するとも理解できます。中途採用はその前提として、慣らし期間はあれど基本的に教育プロセスが不要であり、なによりも即効性が期待されます。

企業からすると新卒採用と中途採用は人員の確保という点では同様で、自社にどの時点で入るのか、そのタイミングの違いや教育期間の有無や長短の差とも捉えられ、早く入社した人が後から入った人よりもきまって優秀だとは一概には言えないのです。また、企業はビジネス環境など与件に左右されるため、人材の評価基準や優秀・有望の意味合いも時々で変わり、近年はその傾向が顕著になってきています。

現に、冒頭であげた企業のような例は増えており、早期退職の募集は従来のリストラとは異なり、「業績が悪くない余裕のある内に新陳代謝を促し、新たな成長分野への展開を進める」との経営判断に基づく人的資源管理の一環と考えられるでしょう。(次回につづく)

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